【はじめに】
光学照準器としてのライフルスコープは、レンズ径に加え、銃の使用用途に応じて1クリック当たりのレチクル移動量に違いがあるものが選ばれます(例:1MOA、1/2MOA、1/4MOA、1/8MOA)。
精密射撃競技等ではPOI(Point of Impact)の細かな調整が可能な1/8、射撃距離が比較的近い狩猟などの用途では1/4、或いは1/2のような調整クリック数が少ない方が狩猟現場では好ましいといったニーズに対し、一方で、射撃距離が1キロメートルを超えるような長距離射撃では射手によっては1クリック1MOA(1000m先では1クリック約30センチの移動量ということになります)が好まれるといったニーズもあるようです。*2022年2月15日Blog更新:10m, 50m, 100m at 1MOA当たりのcm移動量。
お待たせいたしましたMOAです。
【実験でみるMOA】
MOA (Minutes of Angle)は、射手から距離が離れる(射撃距離が遠くなる)につれて広がります。ちょっとわかりずらいです。
唐突ですが、壁に向けて手持ちライトを照らしてみてください。至近距離では壁に照らされる円の大きさは小さいですが、少しずつ距離を置いていくと円は次第に大きくなります。
手持ちライトから放たれる光の角度は距離に関係なく常に一定ですが、距離が遠くなるにつれ照射される光の幅(光の中心から壁に照らされる円の外郭)が広がっていくイメージです。
壁に近い様子
壁から離れた様子
【距離と視野角】
写真縮尺は不正確ですが、上の2枚の写真は距離が離れることで角度の幅(光中心から左右に伸びる緑色線と壁面の赤色水平直線)に変化が現れる様子をイメージしていただくための資料です。それではこの実験を踏まえつつ、タイトルにある距離の話へ向かってみます。
【距離と移動量の関係】
100m(1/4)と400m(4/4)の距離を例に取ります。 ここで前述の手持ちライトの実験を思い出してください。仮にエレベーションを1クリック移動させるとします。たとえ同じ1クリックだとしても、レチクルの移動量は400mでは100m時の4倍の移動量になります。お伝えしたいのは、距離とMOAは常に比例の関係にあるということです。
射撃距離が4倍になれば、レチクル移動量もそれに比例し4倍になります。逆に、射撃距離が短くなる(極端な例として:100m⇒10m)場合、レチクル移動量は10分の1(7.0㎜⇒0.7㎜)になります。
射撃距離の違いによるレチクル移動量の変化を以下の通りにまとめてみました。
【1/4MOAの移動量】
1クリック1/4MOAの移動量の場合:
(*ここでは1/4 MOAを7.0㎜として話を進めます。)
10m => 1/4 MOA = (約0.7mm per Click 移動量)
20m => 1/4 MOA = (約1.4mm per Click 移動量)
30m => 1/4 MOA = (約2.1mm per Click 移動量)
40m => 1/4 MOA = (約2.8mm per Click 移動量)
50m => 1/4 MOA = (約3.5mm per Click 移動量)
100m => 1/4 MOA = (約7.0mm per Click 移動量)
200m => 2/4 MOA(1/2MOA)
300m => 3/4 MOA
400m => 4/4 MOA(1MOA=約28㎜の移動量になります。)
500m => 5/4 MOA(1+1/4MOA)
【Vixen 6-24x58】
ハンティング用のビクセン 6-24x58 ミルドットレチクルはMrad表示ですが、スコープのレチクル移動量はMrad(*1mm per クリック)ではなくMOAです。そしてこちらのスコープの1クリック当たりのレチクル移動量は1/8 MOA(約3.5㎜)です。ちょっとややこしいです。
Vixenのライフルスコープで唯一のMrad/MradはVixen 1-8x28FFP Mil Dot, German 4です。
【1/8MOAの移動量】
次は1/8 MOAです。1/8 MOAの場合、100m先での1クリック当りの移動量は約3.5㎜です。
1クリック1/8MOAの移動量の場合:
(*ここでは1/8 MOAを3.5㎜として話を進めます。)
10m => 1/8 MOA = (約0.35mm per Click 移動量)
20m => 1/8 MOA
30m => 1/8 MOA
40m => 1/8 MOA
50m => 1/8 MOA
100m => 1/8 MOA = (約3.5mm per Click 移動量)
200m => 2/8 MOA =(1/4MOA)
300m => 3/8 MOA
400m => 4/8 MOA =(1/2MOA)
500m => 5/8 MOA
600m => 6/8 MOA
700m => 7/8 MOA
800m => 8/8 MOA =(1 MOA= 約28㎜ の移動量になります。)
900m => 9/8 MOA =(1+1/8MOA)
1000m => 10/8 MOA = (約35mm per Click 移動量)
【まとめ】
少し長くなってしまいました。
正直なところ、定期的な射撃訓練がかなわないシューターにとっては、上述の数字を頭に入れてフィールドに立つことはあまり現実的ではないのかもしれません。
朗報といたしましては、近年のハンティング用のライフルスコープは革新的な進化を日々遂げており、スコープを覗き込みターゲットを補足した時点でシューターに適切なエレベーション/ウィンデージ設定を瞬時に指示する機能を備えたライフルスコープは既に存在し、問題はいつ頃にお手軽価格で市場に流通するようになるか?ということです。
技術的なハードルはどの分野にも存在しますが、道具とセンスでハードルを超えることがある程度可能なことは多くのケースで証明されています。吉報を待ちましょう。
ここまでお時間をいただきありがとうございました。
次回は、距離、そして倍率の違いによる見え方の違いについて少し触れさせて戴く予定です。
Instagram、SNSにて情報発信もしておりますのでよろしくお願い申し上げます。
【距離計を内蔵したドットサイト】
狩猟における実際のフィールドでは、標的までの距離を知っているか否かで、得られる結果に大きな違いが現れます。
DoRaSight(ドラサイト)は、レンジファインダー内蔵型のドットサイトです。つまり、ドットサイトの赤点を覗きながら、視点の移動で標的までの距離が判る。測定可能な最大距離は800メートル。