こちらのスコープ。オーストリアに拠点を置くスワロフスキー社製 X5 3.5-18x50P です。このモデルが市場に流通し始めたのは今から8年ほど前です。当時、狩猟用の光学機器市場は、4倍比スコープに続き、5倍比、そして6倍比というカテゴリーで各社シリーズ化を始め、その中でもスワロフスキーの製品ポートフォリオはライフルスコープメーカーのお手本ともいうべき、考え抜かれた製品を用途に合わせ準備をしていたように思えます。今回、ハクバ写真産業株式会社様からこちらのスコープをお借りする機会を戴きましたので、少し中身を見ていきます。それではBlogいってみます。
【オーストリア製】
スワロフスキー本社のHPによると、こちらのスコープのお値段は、3500ユーロ程度です。2023年7月19日時点、1ユーロ=156円換算とすると、54万円強。30㎜径の高級スコープです。
但し、実際それを手に取って見てみると、他社製品には見られない機能性に加え、狩猟用ライフルスコープとしての基本的な本来性能は、業界トップランカーの強さを見せつけられます。この製品は今から8年ほど以前に市場投入されたモデルですが、今もなおこのモデルが継続されている理由には納得できます。
【クリック移動量】
このスコープは、スワロフスキーのスコープ製品群の中でもタクティカルな見た目で、ひと際目を引くのは大型のエレベーションつまみです。
このX5i 3.5-18x50Pは、距離100m先において、1クリック当たり0.5センチメートル(5ミリ)の移動量ということで、MOAに不慣れな方にもわかり易いです。
10クリックで5センチメートル。1回転で100クリックです。物理クリック限界は3周(*300クリック)と47クリック。手元の個体では合計347の物理クリックを確認しました。移動量換算で、100m先で最大1.73メーターの補正幅という感じでしょうか。
【誤射防止】
ゼロストップ機能が付いていることに加え、忘れ防止機能と言うべきか、1回転回す毎にエレベーション窓にある数字が0~3までの目盛りが回転数に合わせて切り替わります(*窓の中に見える数字が6まで刻まれていますので、射撃場でのゼロイン初期設定時におけるツマミ固定位置によっては、最大6まで呼び出せる仕様になってはいるようです)。
何回転回したのか忘れません。ゼロストップ機能が付いていることから、ロングレンジでエレベーションを動かした後は、ゼロインを済ませたゼロ位置へを戻せば大丈夫という訳です。使い易さ向上と、❝最後に何クリック回したかな?❞ といったシューターの不安要素を排除することが出来、安全性が確保されます。
【ビフォー】
このスコープはロングレンジ向けに用意されているスコープです。ロングレンジ向けスコープのダウンサイドは、ゼロインした距離よりも手前の標的を狙う場合です。
シューターによっては、銃口を僅かに下げてという場面かも知れませんが、このスコープにはサブゼロと呼ばれる機能が搭載されています。
【サブゼロの呼出し】
サブゼロ機能を呼び出してみます。このギミックが面白い。エレベーションつまみには左右に写真のような少し大きめの窓が付いています。
紛らわしいのですが、この窓から見える数字自体には意味がなく、この部分を左右から指でくっと上方向へスライドさせてあげることで、サブゼロ機能を呼び出すことが出来ます。
ピンクの線を入れましたが、引き上げるとここに僅かな隙間が出現します。
【ゼロストップ状態】
こちらの写真はスコープ正面。ゼロストップ状態のエレベーションつまみ小窓です。
この状態では、ゼロストップのお陰で、ゼロ位置から下方向へはツマミを動かすことはできません。
【サブゼロ状態】
サブゼロ機能を呼び出すことで、エレベーションつまみの小窓に変化が現れます。
ゼロストップ状態では上方向へしか回らなかったエレベーションつまみですが、サブゼロ設定を呼び出すことで、ゼロイン位置よりも下方向へエレベーションを移動させることができるようになります。
仮に、通常射撃距離が200m或いは300mとした場合、日常的に射撃頻度が高い距離でゼロインを設定したと仮定すると、逆にゼロインよりも手前の100m先にある標的を狙うような場面においては、サブゼロ機能というのは便利と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
【パララックス補正】
サイドフォーカスは50m~無限遠までの設定が可能です。個人的にはもう少し重い感じが好きですが、ツマミ動作は大変滑らかな具合です。
【デントラーマウント】
こちらのスコープに取付けられているマウントはドイツ製のデントラーマウントです。
写真のリング式に加え、タクティカルな外観を備えたワンピース型もご用意がございますので、ご興味のある方は是非お近くの銃砲店様へどうぞ。