ここでは、海外で活躍をする日本の光学機器メーカーのライフルスコープ製品レビューをご紹介をさせていただきます。ここで紹介させていただくレビューは、ドイツ狩猟専門誌に掲載され、著名なドイツ人ライター様によって準備されたものが中心になります。
ドイツ語から日本語へ翻訳したテストレポートについては、ライター様から許可を頂戴したもののみを掲載させていただきますが、テストレポートの著作権(写真を含む)は全てライター様に帰属しますので、記事の2次転用はについては、直接ライター様へその許可をご確認をいただくことになります。ご注意ください。
こちらのテストレポートは、2017年8月に出版されたドイツ狩猟専門誌へ掲載されたものです。既にご紹介をさせていただいているテストレポートを重複する内容になりますが、こちらは写真が異なり、別の独狩猟専門誌へ掲載された記事になります。
良質なライフルスコープは高額です。幾つかの猟銃を所持している場合、このコスト積算は巨大な金額になります。デントラーはこうした状況に対し、ハンターの皆さんへ対応策を提案しています。デントラー社の独創的なアイディアにより、1本のスコープを幾つもの猟銃で使用することが可能になります。しかもスコープの調整を必要とせずに!
ライター:Norbert Klups
仮にライフルスコープが2挺の猟銃に使用される場合、その都度、レティクルは常に調整されなければなりません。高品質ライフルスコープの場合、調整用のターレットに目盛りが刻まれているため、原理としては再調整は可能です、しかしながら、再設定に際して常に誤認識の危険が潜んでいることから、こうした方法は理想とはかけ離れた解決方法です。
デントラー社はこの問題をバリオと呼ばれるスコープマウントで解決したいと考えています。ライフル銃に取付けられるベースレール自体に、高さと水平の調整を可能とする機構(*過去Blogへリンク)が備わっています。従って、着弾点の補正をマウントで行うことが可能なのです。
一度ゼロインを済ませてしまえば、1本のライフルスコープを2挺、或いはそれよりも多くの猟銃で使用することができます。ベースレールはそれぞれの猟銃に取付けられた状態であることから、ライフルスコープの調整も必要なく、しかも間違った操作も起こり得ません。
デントラー社は製品群に2種類のベースレール、ベイシスとバリオを用意しています。これらの相違点ですが、バリオには調整機構が備わっているのに対し、ベイシスにはありません。低価格なベースレールであるベイシスが使用される場面としては、ライフルスコープの付け替えを必要とはせず、着弾点はスコープに内蔵されているウィンデージ/エレベーションで行うといった使用シーンです。
原理としては、デントラーマウントシステムはロックを介して互いに連結する2本のレールから構成されています。下側のベースレールは、猟銃のモデルにもよりますが、ネジ固定、或いはクランプでライフル銃に取付けます。ベースレールは常にライフル側に取付けられている状態です。
ライフルスコープは上部のマウントレール側に取付けます。マウントレールは、インナーレール式、リング式の両方に対応しています。上下のレールを組み合わせると、2つの別々のレールから構成される1体型のマウントを形成します。上部のマウントレールには、横を向いた2つの留め具が備わり、下のベースレールにピッタリと収まります。前側の留め具はベースレール側の留め具受けに収まり、後側の留め具をはめることで水平の取付けアライメントが整います。上下レールは、ベースレールに付いているクランプレバーを180度回転させることで完全に固定されます。
前述の手順により、上部レールに備わったピンが下部レールの中心に空いた穴に収まることで、自動的に全ての軸方向に対し、常に同じ位置で固定されます。クランプレバーの重さは、上部レールに備わっているピンを内側、或いは外側へ回すことで調整をすることができます。丁度良いと感じるポイントで、ピンの側面のある安全ネジを締めるとピンは固定されます。もし1挺のライフル銃に1本のスコープを取付けるだけならば、ベイシスで十分です。ベースレールは高熱で焼入れされた鋼鉄で作られており、さらに表面は錆からの保護加工が施されています。
バリオが必要になる場面とは、同じライフルスコープが別の猟銃に使用される場合です。1挺目の銃では、ライフルスコープは通常通りの方法(スコープに内蔵のウィンデージ/エレベーション機構を用いて)でレティクルを合わせます。次に、バリオを取付けた2挺目の銃にライフルスコープを取付け、着弾点をバリオに内蔵されている機構を使って調整します。この手順を終えると、ライフルスコープは2挺の猟銃で使えるようになります。まるで嘘みたいな本当の話です。そこで、我々は広範囲に渡るテストを実施しました。
テスト用として、我々はメルケル Helix ボルトアクション, .300 Win. Magと、ブレイザー R8 .338 Blaser Magnumを用意し、性能の検証テストに臨みました。加えて、Leica マグナス 2.4-16x56 をテスト用のライフルスコープとして使用することにしました。我々はデントラーマウントシステムに大きなストレスをかけるため、意図的に負担の大きいキャリバーと、大型で重量のあるスコープを選択しました。この方法が頑丈さと射撃精度を検証する最善の方法だからです。
メルケル Helixにベイシスを取付け、ブレイザー R8にはバリオを付けました。1挺の銃に2本のライフルスコープを取付け実施するテストには、ライカに加え、ドリブンハント用のスワロフスキー Z8i 1-8x24をHelixに取付けることにしました。両方のスコープともインナーレール式だった為、取付けは非常に簡単でした。技術的に訓練されていないハンターでも、デントラーマウントが付いているライフルにスコープを取付けることはとても簡単でした。
我々のケースでは、ベールレールの2挺の銃器への固定は、クランプネジを両サイドから固定するだけでした。アドバイスですが、ネジの固定にはネジロック(ミディアム強度)を使うことをおすすめします。
上部のマウントレールは簡単にライフルスコープのインナーレールに取付けることが出来ました。スライドさせることで、各スコープのアイレリーフ位置は快適に調整ができます。最後に、クランプレバーの重さは中央のピンを内側(重く)と外側(軽く)に回すことで調整ができます。この調整を済ますと、固定ツマミは僅かな力で180度快適に回せるようになります。最後に、ツマミを回し切るとバネ式の小さな金属球によりピタッと固定されます。
メルケル Helixにマウントするスコープ2本は通常通り、光学機器に搭載されるウィンデージ/エレベーションを使ってゼロインを済ませました。次に、マウントシステムのリピータビリティー(射撃精度の再現性)のテストを実施しました。初めに、スコープを取り外さずに5発の試射を行いました。続いて、その都度スコープを取り外し、再び元に戻すという方法で試射を行いました。
デントラーマウントシステムは、これ以上ない良い結果でテストを終えました。ベイシスは極めて衝撃耐性に優れ、射撃精度も正確でした。2枚の異なる着弾点を捉えた写真では、特に大きな差異は確認できませんでした。ドリブンハント用のスワロフスキーと、重量のあるライカを交互に載せ替えても、何も変化は見られませんでした。"普通"のライフルスコープマウントとしては、デントラーシステムはファーストクラスであり、おすすめです。
テストが更に面白くなったのは、ライカのライフルスコープをメルケル Helixと、バリオを搭載したブレイザー R8にマウントした所からです。距離100mの射撃場において、Helixはとても良い射撃結果でしたが、ブレイザーにスコープを載せ替えると着弾点は中心よりも15㎝下で、12㎝右に寄っていました。
スコープが付いた状態のバリオは2組で構成されています。上側と下側です。下側のベースレールは他社のマウント同様、2か所のクランプ箇所で銃器へ固定します。上部マウントにはクランプレバー部分を避けるように切り込みがあります。インナーレール式の場合、ライフルスコープの着脱はベースレールと同じ要領です。クランプレバーの重さも同じように調整が可能です。大きな違いは下側にある、高さと水平方向の調整が可能なレールです。
こうした機能は特に新しいものではありません。しかしながら、それらは水平方向に限られた調整機構を備えたものでした。デントラーのバリオでは、高さの調整機構が追加されています。この機構を備えたことで、バリオは光学機器が備えている調整機構を使うことなく、マウント本体で着弾点の補正が出来るようになっています。バリオの補正幅は、100m先で左右1.5m、垂直は上方向200㎝、下方向50㎝の調整が可能です。この調整幅でほとんどのケースに対応できるでしょう。
もちろん、これはウィンデージ/エレベーションのクリック式調整ツマミで行うほど単純な作業ではなく、多少の忍耐も求められます。バリオはベイシスよりも2.5㎜高く設計されています。我々は、初めに水平方向の調整から始めました。中心から右方向12㎝の着弾点補正をするためには、右側の調整ネジを緩め、左側を締めます。この作業の結果、スコープがマウントされている上部マウントレールは水平方向に動きます。更に、右側のネジを再びきつく締めることで2つのネジはロックされます。
2発の試射では、未だ右方向6㎝の位置に着弾しています。ゆえに、私は右側のネジを緩め、左側のネジを少し強めに締めました。次の2発では、今度は行き過ぎです。中心から3㎝左側へ着弾しています。左側のネジを少し元に戻すと、水平方向は完璧に整いました。この部分のネジ固定推奨トルクはおよそ4Nm(インチ—ポンド換算では約36)ですので、固い手締め程度でしょうか。
今度は高さの調整です。高さは偏芯ネジを使って調整します。ロッキングネジがあるので、初めにこれを緩める必要があります。低い着弾点の補正を行うには、反時計回りに偏芯ネジを回します。1回目の補正作業では、2発の試射は中心よりも未だおよそ5㎝下方向でした。4㎝程度上方向への着弾点補正が望まれることから、ほんの少しだけ調整をしました。すると、直ちに希望通りの4㎝プラスの着弾点を捉えました。ロッキングネジを締め上げ、ライフルは完璧な状態です。ライフルスコープをメルケル Helixに付け替え、試射を行いましたが着弾点にズレはありません。これで、ライカのスコープを2挺のライフルで使用できるようになったわけです。
テスト結果から示されるのは、デントラーシステムはその意図された性能通りに機能するということです。バリオにおいては、ライフルスコープは、光学機器での調整を必要とはせずに複数の銃器で使用することが出来ることを証明しました。3挺目の銃器で同一のスコープを使用することも問題ありません。
このスコープマウントを導入することでライフルスコープへの出費を抑えることができそうです。ベイシスは109ユーロ、バリオは399ユーロです。上部のマウントレールは、インナーレール式であれリング式であれ、250ユーロ程度です。バリオを導入することで、2挺目の銃器にライフルスコープ購入を控えることもできます。
一体型のスチールベースレールのお蔭で、デントラーマウントは非常に頑丈で、高精度であることがテストでは証明されました。
しかしながら、ライフルスコープの着弾点補正を行うに際して注意すべき点があります。新たなバッチの火薬、カートリッジを変更するときは、2挺目の銃器でも着弾点の再確認を行うことを覚えておく必要があります。
デントラーマウントのベースレールは市場に流通する70種類をこえる銃モデルに用意されています。上部のマウントレールには、インナーレール式に加え、異なるサイズのリング式も準備されています。レッドドットサイトを取付けられるマウントレールさえも用意があります。
ライター:Norbert Klups
日本語翻訳完了いたしました。
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